てくてっく

コマ撮り作家系エンジニアです。日々地味ぃぃぃにつまづく技術的な問題について、備忘録として作ります。

書評

 金融系の勉強をするために、いくつか本を調達して来た。

まったくの初心者なので、間違いを恐れずにとにかく幅広く読みたい。

 

 1、  「FinTech」柏木亮二・著

フィンテック

フィンテック

 

「上司の質問に答える」という切り口で、フィンテックの基礎を解説している本。

非常にありそうなシチュエーションを想定しているのも面白いし、技術や固有名詞の羅列ではなく金融の流れとしてフィンテックを捉えて書かれており、良い本だと感じた。

特徴的なのが、FinTechを1.0〜4.0に分類している点だ。

 

FinTech1.0:技術によって、既存の金融業務を効率化・高度化すること

            2.0:既存の金融サービスの解体すること(アンバンドリング)

            3.0:APIブロックチェーンなどによって、解体したサービスを再構築すること

            4.0:繋がったサービスが新たなエコシステムを作ること(リバンドリング)

 

2.0〜4.0はひとつにまとめても良い気がするが、内容は理解できる。

 

そして結論として、お金から生まれたFinTechが金融を包摂すると述べ、そしてそのお金自身を金融サービスの価値尺度の役割から解放するだろうとしている。

 

FinTechが「本来の金融」を志向しているという点で、後述の「お金2.0」と似たことを述べている。内容もまとまっていて、コンパクトなので良い本だと思う。

 

 

2、「お金2.0 新しい経済のルールと生き方」佐藤航陽・著

お金2.0 新しい経済のルールと生き方 (NewsPicks Book)

お金2.0 新しい経済のルールと生き方 (NewsPicks Book)

 

ビジネス書として知名度抜群のベストセラー。ただ、みんなこの本最後まで読んだのだろうか?FinTechを1.0と2.0に分類し進むと思いきや、「そもそもお金とは?」「経済とはなにか?」というテーマに突撃し、熱い文章で引っ張るが内容が薄めで途中でだれる。

 

しかし「経済圏を作る」というテーマになってからは一転、とてもわかりやすく、示唆に富む話になってくる。「お金や経済の民主化」「価値で回る経済の実現」など、テクノロジーの果たす役割とその未来が描かれる。先述のように、1番の書籍と似たような結論とはなっている。こちらはより積極的に、新たな経済圏を作っていこうというスタンスだ。

 

そして文章がだれたり冗長だったりするのは、著者の人生の哲学もまとめて書いているからだ。言い方を変えると、これは著者なりの哲学の本なのだ。その対象がたまたま金融だっただけではないかと思う。そういう意味でとても魅力的な良い本でありながら、金融の本としてはまとまりがなく感じられ、タイトルも不適切に感じられる。もっと純粋な形で受け取れたらより良かった!という印象である。 

 

ちなみにこちらの本では、FinTech1.0を「既存の金融を技術で高度化」、2.0は「仮想通貨などの技術を用いた、金融の新しい概念」としている。仮想通貨であっても1.0に該当するものもある気がするので、分類としては1番の書籍の方がしっくりくる。しかし2つに分類するすっきりさは良い。

 

 

3、「電子マネー革命がやって来る!」安達一彦、山崎秀夫・共著

電子マネー革命がやって来る!

電子マネー革命がやって来る!

 

 この分野を勉強するにあたって、最初に手に取った本。

この本を読んで、まずびっくりした。こんなに、中国や新興国での電子マネーの普及が凄いことになっているのか!と、正直思った。しかし電子マネープリペイドQRコード、クレジットカード、デビットカード・・・だんだん「それぞれの方式や特性、法整備状況を知らないと何もわからない」と思いはじめ、とにかく知識を入れることに決めた。この本のインパクトに感謝である。

 

さて改めてこの本を読むと、「事例の羅列」という印象が強い。様々な技術や方式について触れてはいるが、結局どれも先述の「FinTech1.0」の枠内で話していると感じた。

 

 

4、「電子マネーがわかる」岡田仁志・著

電子マネーがわかる (日経文庫)

電子マネーがわかる (日経文庫)

 

 「さあ、この本と一緒に、多彩な電子マネーの世界の世界に出かけましょう」(まえがきより)

というまえがきの通り、電子マネーの種類について教えてくれるほっこりした本である。この本は2008年発行、10年でずいぶん空気感が変わったものだ。

 

電子マネーの種類だけなので参考程度に読んだが、ひとつ良い考え方があった。

新宿で行われ、2000年5月に終了した「スーパーキャッシュ共同実験」についての記述で、利用者が電子マネーを使いやすくする仕掛けとして、

電子マネーを使える場所がはっきりわかること、電子マネーが歓迎される場所がはっきり区別できることである。(162p)

 と述べていた。

実験段階の電子マネーと現在の状況では違いの方が多いが、それでもこれは重要な示唆であると感じた。日本はまだキャッシュレス社会ではない。メリットを理解していないというのもあるだろうが、「使いにくい」というのもあると思う。

 

コンビニや駅はキャッシュレスでの決済がとても使いやすい。機器も完備されているし、レジのオペレーションもスムーズだ。他方、個人商店や飲食店などでクレジット支払いをするとレジで時間がかかる、暗黙に現金払いを勧められる、そもそも使えない、そういった経験をした人は多いのではないだろうか。

 

これが「この駅の周辺の店は現金を持ち歩かなくても大丈夫」と思えたら、どれだけキャッシュレス化が進むだろうか。都心をのぞいて、なかなかそういうところは少ない印象だ。

 

20年近くたっても前述の「電子マネーが歓迎される場所」は、はっきりしていないのだ。

 

 

5、「キャッシュレス決済革命」日経MOOK

最新の動向から個別の事例まで、広く深く載っている印象で、読んでいる最中。

特に本田元の「脱ガラパゴスとなるか 多様化する決済手段」(31p) という特集は、アメリカのEBTカード(食料配給)について「用途が限定できる国際ブランドのプリペイドカード」として紹介しており、非常に示唆に富んでいる。

ギフトなどの分野でも活用できそうな事例のように思う。

 

 

以下は銀行法、資金決済法、(プリペイドカード法)、割賦販売法などについて学ぶ資料としてつまみ読みしている本である。

 

6、金融法概説

金融法概説

金融法概説

 

銀行の固有業務についてわかりやすい

 

7、逐条解説 資金決済法

逐条解説 資金決済法

逐条解説 資金決済法

 

前払式支払手段と資金移動業について見るのに良い。逐条解説なのでわかりやすい、ところもある。

 

8、新版プリペイドカード法の手引き

新版プリペイドカード法の手引き―前払式証票の規制等に関する法律

新版プリペイドカード法の手引き―前払式証票の規制等に関する法律

 

資金決済法施工に伴って廃止となった前払式証票の規制に関する法律、いわゆるプリペイドカード法について。法律だけではなく対応する事務ガイドラインなども併記してくれていて使いやすい。 

 

9、金融読本

金融読本(第30版) (読本シリーズ)

金融読本(第30版) (読本シリーズ)

 

金融とは〜、ブロックチェーンとは〜、幅広く触れていて面白そうだが、なぜか読み進まない。

 

10、貨幣進化論

貨幣進化論―「成長なき時代」の通貨システム (新潮選書)

貨幣進化論―「成長なき時代」の通貨システム (新潮選書)

 

直接FinTechについて書かれているわけではないが、ゲゼルにハイエクケインズ、そして人類は「賢い愚者」なのではないか・・・という、ロマンあふれる筆致で貨幣多様化論を説く本。お金2.0との単語の被り方が多いので、もしかしてこれに影響された・・・?非常に詩的で洞察の深い文章に惹かれる。読んでいる最中。

 

 

以上10冊。